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『報道分析』を広報戦略に活かす

~環境の変化、論調の動向を捉え、自社にフィードバック~

報道機関を通じた情報発信は、企業広報活動の主要な柱であり続けていますが、一方でインターネットやSNSの普及により、私たちが日々接する情報はますます多様化しています。オンラインメディアによる情報発信の増加に加え、SNSなどを通じた個人の意見や匿名の書き込みが、報道によって波及し、社会に影響を与えることも珍しくありません。このような変化の中で、企業広報は「報道」とどのように向き合うべきでしょうか。

今回のニュースレターでは、広報活動の立案に不可欠な「報道分析」をテーマに取り上げ、コスモ・ピーアールの報道分析事例を参照しながら、「報道分析とは何か」、「報道分析で何ができるのか」を紹介し、「報道分析を活用して自社の広報戦略にどのように反映させるべきか」を考えます。

報道分析とは何か

報道分析は、テーマ、対象メディア、対象期間、そして何を分析するのかを明確に定めて行われますが、最も重要なのは企業の問題意識や目的をどのように反映させるかです。

報道分析は、主に以下の3つの方法を用いて実施されます。

【定量分析】
特定されたテーマが、メディアでどのように取り上げられたか、件数の推移を定量的に計測。競合との比較、トピック別の記事分析、媒体による特徴抽出を行う。記事の大きさを広告費換算することも可能。オンラインメディアでの報道や、X(旧ツイッター)、Instagram、Facebook、YouTubeなどSNSのインプレッション数も分析の対象とすることが可能。

【定性分析】
記事の論調を分析し、ポジティブ、ニュートラル、ネガティブなど、質的に判断。

【定量・定性分析】
定量と定性を組み合わせ、トピック別の論調変化を分析。

コスモの肺がんに関する報道分析

コスモ・ピーアールが発行した「報道分析レポート-肺がん」(2024年11月発行)を基に、報道分析の一例をご紹介します。データベースとして「日経テレコン」を使用し、2024年8月1日~31日の期間について、新聞、雑誌、専門誌など約500媒体から“肺がん”に関する報道を検索しました。その結果、合計180件の報道が確認されました。

これらの報道についてトピック分析を行ったところ、8つのトピックが抽出され、患者・人物、薬剤・機器に関する記事が最も多いことが分かりました。また、分析結果からは、媒体カテゴリーごとに特徴的な報道傾向が見られ、例えば専門紙では製品承認や開発に関するニュースが多く、全国紙や一般紙では患者や人物に関するトピックが多い傾向にありました。さらに、報道の中で言及されている企業名を比較すると、同期間では22の企業が報道され、さらに第一三共株式会社に関する記事が多いことが分かりました。

これらの結果にあわせて、各カテゴリーや企業の記事を読み込んでいくと、市場環境で起きている動きを把握することができるだけでなく、どの媒体がどのようなトピックに敏感なのかを把握することが可能となります。なお本分析は単月の記事を対象としていますが、報道分析やメディア・モニタリングは、経時的なトレンドの変化を捉えることによって得られる示唆が大幅に増加するため、継続的な実施が好ましいといえるでしょう。

分析軸は、問題意識に合わせてカスタムメイド

報道分析は、企業の広報における問題意識に基づき、テーマや対象メディア、モニタリング期間、分析軸が設定されます。これにより、自社の製品やサービスに特化した詳細な分析が可能となり、意味のある結果を広報戦略にフィードバックすることが可能です。

報道分析では、自社が発信したニュースが、どの程度メディアに取り上げられているのかに限らず、以下のような疑問にも対応することが可能です。

  • 伝えたいメッセージが伝えたい相手(ターゲット・オーディエンス)に正しく伝わっているのか
  • 伝わっていない要因は何か
  • 競合他社と比較して、自社の強みや弱みをメディアはどのように評価しているのか
  • メディアは自社の何を評価し、逆に何を批判しているのか
  • メディアが大きく反応する事例やその要因は何か
  • SNS上では自社のことや自社製品のことがどのように扱われているのか
  • 自社を取り巻く社会や経営環境の変化、論調の変化をもっとタイムリーに察知できないか

企業広報の問題意識は様々です。その問題意識をカスタムメイドの報道分析に落とし込み、その結果に考察を加えることで新たな知見を積み重ねることができます。

ステークホルダーモニタリングとは

企業は多くのステークホルダーに支えられ、また影響を与えながら事業活動を展開しています。「ステークホルダーモニタリング」は、報道やSNSを通じて、キーステークホルダーの動向や発言を把握し、広報活動や渉外活動に役立てるための手法です。

具体的には、報道分析と同様に検索キーワードを設定し、対象となるステークホルダーの活動内容や発言内容を報道やSNSから抽出します。例えば、高額な医薬品に対して、誰が、どのような機会に、どのような趣旨の発言を行ったのか、それを伝えたメディアは何か、などを抽出します。これによって、ステークホルダーのトピックに対する「意識」や「動き」を理解することができ、今後の対外的な活動を検討する上でのインサイトを得ることができます。例えば、ネガティブな意見を表明しているステークホルダーの意見を分析することで、ステークホルダーが何をどう理解し、何に懸念を抱いているのか、どの懸念を払しょくすることが意識変容に繋がる可能性があるのか、などを検討することができます。ステークホルダーモニタリングは、公開されている文書から分析を行うため、より客観的にステークホルダーの見解を理解するのに役立ちます。

広報の目的を見失わずに

さて、ここまで報道分析を広報戦略に活用することの重要性について述べてきましたが、広報活動の効果測定や広報活動の必要性を社内に説得するための材料として報道分析を活用することを否定するものではありません。報道分析には様々な活用方法があり、それは数字をトラックするだけではなく、定量と定性の分析を組み合わせたり、分析軸を工夫したりすることで、より深い洞察を提供し得るものであることを紹介しました。また分析はあくまでツールであるため、分析結果の数字だけに注目するのではなく、常に広報の目的に立ち返って、分析結果を「活用する」ことが重要です。

外部支援も活用を

「報道分析」を企画・設計し、その結果を読み取り、考察を加え、問題を発見して対応策を立案する、一連の作業を必ずしもすべて社内で完結させる必要はありません。社内の広報スタッフが少なく手が回らない、ノウハウの蓄積が無い、報道分析を行ったことがない、新しい視点で報道分析作業を見直してみたい、などの場合には、専門的なノウハウとスタッフを有する外部機関の力を活用することも一案です。

コスモ・ピーアールでは、カスタムメイドの「報道モニタリング・分析レポート」や「ステークホルダーモニタリング・レポート」を提供しています。今回の肺がん報道分析で対象とした、日経テレコンに含まれる報道媒体に加えて、SNS(X、Instagram、Facebook、YouTube、TikTok、LINE等)もモニタリング・分析可能です。月次での定点的な分析だけでなく、過去に遡った年間分析も可能です。様々なニーズに対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

なお、ニュースレターでご紹介した「報道分析レポート-肺がん」(2024年11月発行)とコスモ・ピーアールのモニタリングサービスについて、資料をご希望の方は、こちらからご連絡ください。

岩下裕司『報道分析』を広報戦略に活かす