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メディアアンケート調査 -“コロナ以降”の報道と企業のあり方を考える-

オンラインでの取材が定着し、9割が継続を希望する一方、対面取材のメリットや重要性が再認識される

2023年5月、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類感染症となったことに伴い、私たちの日常生活や企業における活動も、徐々に通常に戻りつつあります。
そこで、コスモピーアールでは、2022年12月に実施した報道関係者向け調査の第2弾として、2024年8月、ヘルスケア領域をカバーする報道関係の皆様を対象に、「“コロナ以降”の報道と企業のあり方」をテーマとするアンケート調査を行い、①報道と企業のあり方に関して、前回調査と比べて何が変化しているのか ②新たな問題は起きていないのか-を探ると同時に、初めての試みとして、③製薬企業の広報部員と広報代理店のスタッフに対する報道側の期待-について全国紙、業界紙、フリーランスの記者合わせて73人の方から回答を得ました。回答に当たっては、選択肢のほか、フリーアンサー欄を設けて、普段あまり耳にしない記者の皆さんの“本音”も自由に記入していただきました。

以下、フリーアンサーの要約を含め、調査結果の概要をご報告します。
(調査日、調査対象の詳細は後掲の【調査の概要】参照)

 

<Ⅰ>情報提供のあり方

調査ではまず、「オンラインで開催されるセミナーについて、不都合と感じる事柄」を聞いてみました。(複数回答)

<オンラインで開催されるセミナーについて不都合と感じる事柄>

結果は、グラフの通りですが、コロナ禍でオンライン取材が続いたことで、その弊害、デメリットを実際に体験した記者の皆さんの、率直な意見が反映されており、改めて対面取材の重要性が再認識されていることがうかがわれました。

次いで、「対面での取材が可能になってもオンラインでの情報提供は継続すべきか」を聞いたところ、弊害は認めつつも、オンラインのメリットは無視できず、「選択肢としてオンラインでの情報提供は継続すべき」との声が、前回(202212月、以下同じ)の87%から93%にまで上昇しました。さらに、インタビューとセミナーに分けて、対面取材、オンライン取材のどちらを選ぶか改めて聞き、その理由もフリーアンサーで回答してもらいました。
その結果、インタビュー取材では「対面取材」を希望する人が66、「オンライン取材」を希望する人が4%、「どちらでもよい」と答えた人が30%いました。セミナーでは、「対面での参加」を希望する人が34%、「オンラインでの参加」を希望する人が14%、「どちらでもよい」と答えた人が52いました。対面でのインタビュー取材を希望する声が前回の40%よりも大幅に増える一方、「どちらでもよい」と答えた人がインタビュー取材でもなお30%(前回は60%)、セミナーでは「どちらでもよい」と答えた人が前回の42%より増加し、実に52%もいたことが注目されます。

<対面とオンライン開催の両方が選べる場合に、どちらに参加したいか>

 

「どちらでもよい」を選んだ理由をフリーアンサーで聞いてみると、記者の皆さんの真意が明らかになりました。寄せられた声を集約すると、「対面、オンラインそれぞれでメリット、デメリットがあり、内容やスケジュールによって取材方法を適宜選択できると有難いので、企業からの情報提供は対面とオンラインを併用するハイブリッド型で継続して欲しい」というものでした。これは、前の質問で、「オンラインでの情報提供の継続を希望する」と答えた理由とも、ほぼ一致しています。記者の皆さんの立場に立てば「どちらかに限定されると困る」ということであり、中には「セミナーはオンライン併用が当然と考えているので、今更リアルの開催のみに限定されてしまうと戸惑う」という切実な声も聞かれました。

なお、対面の取材を希望する理由としては、取材上のメリットとして「細かい点まで聞ける」「追加質問がしやすい」「相手の話の途中で割って入り、突っ込んだ質問ができる」「本題以外の話題や雑談でも得られる情報が多い」「セミナー終了後の名刺交換の雑談で取材のヒントが生まれたことがある」「相手の熱量が感じられる」などが挙げられていました。また、「ぶら下がり取材後にアポ取りができる」など、取材後の関係づくりにメリットがあるとの声も聞かれました。
一方、オンラインでの取材を希望する理由としては、「時間や場所の制約がなく参加可能だから」とする回答が代表的で、他には、「オンラインのセミナーは画面が見やすく、音も聞きやすい」「資料等を画面で共有しながら取材できるのでわかりやすい」「画面録画機能があるので、後日見ることができ有難い」という声も聞かれました。

 

<Ⅱ>企業広報と広報代理店に求めるもの

記者への広報対応はスピーディーに、タイムリーに

今回の調査では初めての試みとして、製薬企業の広報部員、広報代理店スタッフに対する報道機関の皆さんの期待についても意見を伺いました。
まず、製薬企業から発信される情報で重要視している事柄を選んでいただきました。(3つ)

<製薬企業から発信される情報で重要視している事柄>

グラフが示す通り、上位3つは、製薬企業が市場に提供する商品即ち、薬剤の効果・効能やその信頼性、エビデンスに関わるものでした。昨今、商品の安全・安心に対する消費者の意識は高まっており、報道機関も、その点に高い関心をもっていることがわかります。もちろん、このグラフは全体集計を示したもので、トレンドを知る上では有効ですが、個々の媒体の特性によって関心領域は異なっていることにも十分留意する必要があるでしょう。例えば、今回の調査で低位にランクされた、経営や財務に関心のある媒体、項目にはなかった「働き方」に関心のある媒体などに対して、どのような情報提供や広報対応をすべきなのか、それぞれの製薬企業の特性を生かした工夫が求められます。

次に、製薬企業広報部員とのコミュニケーションにおいて有益だと思う事柄を挙げてもらいました。(5つ)

<製薬企業広報部員とのコミュニケーションにおいて有益だと思う事柄>

結果はグラフの通りで、上位にある「わかりやすい説明」「スピーディーな対応」「自社製品の知識や情報」は、いずれも情報提供の基本に関わる事柄であり、当然といえば当然の結果と言えますが、背景にどのような事情があるのでしょうか。

 

「とにかく電話に出てほしい」との声、多数

次の質問で「改善した方が良い点」をフリーアンサーで求めたところ、「電話に出てもらえない」「プレスの連絡窓口の電話番号を、ウェブなどで分かりやすく掲出してほしい」「メールでの質問は手間がかかるし、遅い」「対応をメールだけとするのはやめてほしい」「プレスリリースなど発表を行った日は、電話に出られるようにしてほしい」「不在着信があったら、その日のうちに連絡がほしい」などの指摘が寄せられました。
「有益だと思われる事柄」と「改善した方が良い点」とは裏腹の関係になっており、「記者の皆さんの期待と現実にギャップがある」ことを暗に示していると解釈することもできます。「スピーディーな対応」が大事だという回答は、「クイックレスポンス」を期待している記者の皆さんからの声と読み取るべきでしょう。コロナ禍を経験する中で、企業はリモートワークや業務の効率化、デジタル化に取り組みましたが、社内事情を優先して、本来企業広報として行うべき基本動作がおろそかになってはいないか、情報サービスの質が低下してはいないか、今回の調査結果を“他山の石“として顧みるのも有意義なことではないかと思われます。

続いて、広報代理店スタッフとのコミュニケーションにおいて有益だと思う事柄を聞きました。(5つ)
広報部員への期待とは異なる選択肢も含めたので、単純な比較はできませんが、回答の上位を占めた「スピーディーな対応」「わかりやすい説明」などは広報部員に対する質問への回答と共通していました。一方で、2位に「取材支援」、4位に「競合他社を含めた公平な情報」が選ばれていることから、広報部員とは異なる役割を期待する声もあることがわかりました。

 

<Ⅲ>メディアが注目するヘルスケアトピック

世の中の動きや読者のニーズに敏感に反応、メディアの力を活用し、社会の関心喚起も

最後に、注目するヘルスケアトピックを選んでもらいました。(3つ)

グラフは、過去1年で注目したヘルスケアトピック、現在関心のあるヘルスケアトピック、そして今後注目していくであろうヘルスケアトピックを、トピック別に並べ、時系列の変化を見たものです。

<注目トピック>

 

コロナウイルス感染症が収束に向かう中で、感染症への関心が大きく低下し、ドラッグロスの問題も今後改善が見込まれる中、関心度合いが漸次低下傾向を示しています。これに対して、がん医療と認知症が変わらずにランク1位、2を占めています。今後注目が高まると思われるトピックとしては、遺伝子治療と医療財政が挙げられており、興味深い結果となりました。
メディアの関心は読者の関心であり、注目するトピックは、社会の関心を敏感に反映していると言うことができます。同時に、メディアの注目を獲得し、それが記事化され広く伝播されれば、社会の関心を喚起することにもつながります。
自社の事業領域、専門とするヘルスケア領域に対するメディアの注目を獲得し、社会の関心を喚起するためには報道機関の関心を継続的にモニターし、記者の皆さんの声に謙虚に耳を傾け、情報ニーズを的確に把握することが不可欠です。

「報道と企業のあり方」をテーマとした今回の調査結果が、その一助となれば幸いです。

 

【調査の概要】
調査名:“コロナ以降”の報道と企業のあり方
調査日:2024年8月27日(火)~8月29日(木)
調査方法:インターネット調査
調査対象:ヘルスケア領域をカバーしている記者の皆さん
有効回答数:73名(内訳=全国紙8,通信社5,産業紙1,業界紙12、医療従事者向け媒体21、一般雑誌5、テレビ3、ウェブ媒体13、その他5)

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(注)本ニュースレターは、コスモ・ピーアールが独自に実施したアンケート調査の結果をもとにとりまとめたものです。調査内容に関するお問い合わせはinfo_cosmo@cosmopr.co.jpまでお願いいたします。

 

岩下裕司メディアアンケート調査 -“コロナ以降”の報道と企業のあり方を考える-